舞台は20世紀末に世界大戦が起こった後の世界。白い制服を着用する主人公の男は特殊警察機構89605分署の署長。特殊警察機構は一般警察が担当する仕事には一切口出しせず、戦争(作中ではその言葉を恐ろしがって誰もが「セ」としか言わない)という概念を唱える人間を取り締まっている。盗聴はごく当たり前に行われ、密告が奨励されている。特殊警察に捕らえられた者は拷問により取り調べられた後、「人類の敵」として公開処刑される。 また、閉鎖図書館と呼ばれる図書館があり、過去の文書、書籍や新聞等からは過去の戦争の存在自体を抹消すべく、巧妙に記述を書き換えたり、『西部戦線異状なし』、『裸者と死者』、『三国志』、『風と共に去りぬ』のような戦争物の小説は焼却処分にしたりしている。それ以外にも、古戦場から弾丸等の戦争の遺物を処分したり、城跡については「かつて流行したゲームの会場」だったことにしてそのゲームのルールを新しく作り上げるなど、徹底して戦争の存在に関する証拠の抹消を図っているのである。 主人公は特殊警察機構の一員であるため、改竄される前の歴史を知っている。男は軍備を縮小すれば、あるいは心構えさえできていれば、戦争を防げるという過去の人々の考えを批判し、気ちがいと呼ぶ。

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